ROMA(抄録)

ずっと昔から、ロマに会いたいと思っていました。
私が子どもの頃はジプシーと呼ばれていて、幌馬車に乗って放浪し、夜は焚き火の傍らで音楽を奏でる。そんなイメージに憧れていたのです。

最初のロマは、15世紀にインド北部からヨーロッパにたどり着いたといわれています。日本人が持つロマンチックなイメージとは裏腹に、実際は得体の知れない漂白民として各地で蔑視され、過酷な暮らしを強いられてきました。
現在はもう旅するロマはいませんが、600年もの間ヨーロッパ人に同化することなく、独自の集団で暮らし続けている彼らは、今でも非常に閉鎖的な民族とみなされています。

しかし、親子や近しい親戚で集まって住む小さなコミュニティの内側は、不思議な居心地のよさが支配しています。
国を持たない彼らにとっては、血のつながりこそが、安心を約束された居場所なのでしょう。
ここに紹介するのは、バルカン半島の小国、アルバニアの山奥の町で出会ったロマの人々です。

アルバニアは1990年代初頭まで鎖国されていて、まさに時間の止まった世界でしたが、近年になって全土で観光開発が進んでいます。
急速に変化する社会の中で、ロマの家族の形はこれからどうなるのでしょうか。

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